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燃焼

   

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暁光は剣となりて⑨



 ついに九話目。結構長いこと続いてるなあと自分で感心……ともかくスローペース過ぎてどうしよう。
 もうちょっと早めに書けたらいいんだけどなあ↓↓


 







 耳朶を蝕む羽音に眉をひそめる。
 苛立ちを抑え、前に進んだ。
 密林は最高に居心地が悪い。
 一体何故俺が、と思いながらも彼はシルバーアクセサリーを付けた腕で、茂みを掻き分けた。
 仕方ない。命令なのだから。

 ああ、くそ!
 また泥沼だ。靴が汚れるじゃねえか!
 クソったれ!





暁光は剣となりて





 いつも通りの朝を迎えるはずだった。
 穏やかに、ゆっくりとした新しい日。そうなのだと信じて疑わなかった。
 しかし。

 早朝、不意に綱吉は飛び起きた。
 布団を蹴飛ばし、ついでにコロネロを足蹴にするのも気にせず、障子を開けて外へと転がり出る。
 慌てた様子で空を見上げた彼は、ざっと顔を青ざめさせた。
 夜明けの紫と青と白が入り混じった美しい色彩も、今の彼にはどうでもいい事だった。否、今はそれらは見えなかった。彼の琥珀に映っているのは、空ではない。ある意味空なのかもしれないが。
 彼は、彼と旧友とで織り上げた結界を見ていた。山を覆い尽くすドーム型の巨大で強大な結界だ。しかし通常、空が透けて見えるはずの結界が、今は真白くなっている。
「うそぉ……」
 思わず呟く彼の隣に、コロネロが蹴飛ばされた頭を抱えながらやって来る。
「何なんだ、コラ」
 彼にしてみれば、心地よく寝ていたところを蹴飛ばされて起こされ、腹立たしいのだろう。綱吉はそんなコロネロに上を示す。
「……空が白い?」
「違う。空じゃなくて結界」
 それから彼は苦々しげに言う。
「白いんじゃなくて、ヒビだよ」
「ヒビ?」
 おうむ返しに尋ねるが、綱吉は頬をひきつらせながらうわあ、と呻くだけだ。要領をえない。どうしようもないところへ、結界を作ったもう一人がやってきた。
 渋い緑と茶の縞が入った着物をまとったその男、六道骸は綱吉と同じく苦々しい顔で空を見上げた。
「おはようございます、お二人さん」
 最悪の目覚めでしたけどね、と付け足した彼は、ため息をついた。
「ヒビ入っちゃってますね……せっかくの力作だったのに」
「ヒビ? あの白いやつか?」
「ええ、細かなヒビが全体に広がってるんです。まったく、どこの誰だか知りませんが……」
「骸」
 低く、呟くように落とされたそれに、骸が肩を震わせた。
 幼児の機嫌は悪い。半眼になった彼はじろりと骸を睨み上げる。
「誰を呼んだ?」
 端的に問われた骸は、肩をすくめた。
「お察しの通りですよ」
「ふざけんな」
「ふざけてなどいません。本当は僕の知る全てに連絡してやるつもりだったんですから。しかしそうしたら君に殺されそうな気がしまして、やめておきました」
 一瞬、綱吉の顔から表情が消え去った。しかし、すぐに諦めの体で肩を落とす。
「だからこないだあんな事を言ってたんだな」
 コロネロからしてみれば、今の状況はまったく何が何だか分からなかった。そんな彼を気遣ってか、骸が状況を説明する。
「僕達の愛の結晶が壊されかけてるんですよ。あの結界は全てを拒む結界ですが、敵意を持つ者には過剰に報復を、その分、持たない者には過小に報復を与えるようになっているんです」
「要するに、テメエらの知り合いが結界ぶっ潰して入ろうとしてるって事か?」
 はい、と笑顔で答えた骸な隣で綱吉が苦い顔をしている。どうやら、心当たりがあるらしい。
「しかも、結界の持つ修復機能を逆手に取った上手い戦法です。あいつは嫌いですが、これだけ上手くやられるといっそ清々しくもありますね。つまり」
 ぴしり、と何かがひび割れるような音がした。
 骸も綱吉もコロネロも、何かを期待して空を見上げたが、さすがは名だたる幻術師と古血の結界と言うべきか、これだけのひび割れでもまだその役割を果たしているようだった。
「どこかが壊れるとその周りの結界から材料を集めて修復するように組んでるのですが、これには致命的な弱点がありましてね」
 ようやく、コロネロも納得した。
 要は、全体に均等に負荷をかけてやれば、修復機能は起動せず、結界は呆気なく壊れてしまうのだ。しかし、その前提条件として、恐ろしく精密かつ半端ではない力量の術の発動が必要になる。もちろん、人間には不可能だ。
 古血が、いるのだろう。
 しかも綱吉と骸の表情からして、厄介な古血のようだ。
「あ、くるよ」
 そう言った綱吉を骸が腕の中に閉じ込める。
 何事かと思った刹那、轟音と共にきらきらと光る大量の粉が降ってくる。髪や服にまとわりつき、まるで小麦粉を被ったようになったコロネロは、数秒間続いたそれが終わったのを確認し、それからそろそろと顔を上げた。
 綱吉を庇った骸がせき込んでいる。吸い込んでしまったらしい。
 辺りを見れば、雑草だらけの地面は見えない。新雪が降り積もったように、辺り一面真白く輝いていた。暁の人を惑わす淡い光の中にそれはあまりにも幻想的過ぎた。
 思わず感嘆の声が漏れる。
 とても美しい光景だった。
「あんの、馬鹿鳥……! 焼き鳥にしてやるっ」
「……見事に壊されたなぁ」
 むせる骸の背を撫でながら、生暖かい目で周囲を見回す綱吉。
「コロネロは会った事無いんだよね」
「誰にだ?」
「雲雀さんに」
 思わず何もつまっていないのに咳き込んでしまった。
 件の有名な吸血鬼と並ならぬ面識があるとは聞いていたが、まさか噂をしてすぐに会えるとは思わなかった。同僚から聞いている彼の吸血鬼の評価は端的に、クレイジー、だ。
 その雲雀恭弥が、現状の原因らしい。
「キャバッローネって知ってるだろ? あそこの当主の血族だよ」
「何であんなのに血を分けたんですかね、跳ね馬は」
「色々あるんじゃない? 俺だって、ジョットに食い物で釣られたようなもんだし」
「そうなのか、コラ……」
「そうだったんですか」
「それで血を分ける炎帝も炎帝だけどね」
「まあ、俺もアルコバレーノに入ったのは給料が良かったってのがあるな」
 白粉の中で談笑している三人。
 ふと、幼児がぴくりとして、一方向に振り向いた。つられて見たコロネロは、森の奥からやって来る人影を認める。
 どうやら、彼らしい。
 遠くからでも分かる絶大な覇気は、ゆらゆらと妖しく揺らめいている。殺気立った彼の矛先は、綱吉でもコロネロでもなかった。
 骸の右目が不穏な輝きを放つ。空中に出現した三叉槍を握り締め、彼は立ち上がった。
 やがて森から姿を現したのは、黒髪を短く切ったスーツ姿の青年だった。つり上がった切れ長の黒瞳は、爛々と朝靄の中で光る。
「やあ、久し振りだね」
 言って、舌なめずりをするや否や、白い地面を蹴って骸に襲い掛かる。手にしているのはトンファーだ。大きく振り上げ、加速をつけて骸を殴りつける。が、彼とて大人しくやられている訳がなく、三叉槍でトンファーを受け止めた。
 ぎちぎちと、金属が触れ合い、触れれば切れそうな均衡が生まれる隣で、綱吉が遠い目で空を眺めていた。
「止めなくていいのか、コラ」
「いーんじゃね。いつもの事だし」
 匙を投げ出した綱吉の隣に座り込み、コロネロは二人の争いを待つ事にした。
 ちなみに、戦闘が終了したのはその二時間後の事である。


 仏頂面が、綱吉を見た。
 それから一言。
「何で?」
 不機嫌丸出しの声音。
「何でと言われても……こればっかりは血の導きとしか」
「何で僕じゃだめなのさ」
「いや、あんた会った時もうディーノさんに血をもらってたじゃんっ!!」
 叫んだ幼児は頭を抱えた。
 ちなみにコロネロと骸は今ここにいない。骸は雲雀の天敵だし、コロネロは雲雀の怒りの原因だ。
 むすっとした表情で、雲雀は食卓に肘をつく。胡座をかいた彼は大きくため息をついた。
「アルコバレーノを吸血鬼にしたって? 馬鹿じゃないの」
「うるさいなあ……俺だってびっくりしたよ」
「人間に喧嘩売る気? いくら云千年の古血でも危ないよ?」
「わかってる」
 唇を噛んだ幼児を見て、雲雀は眉をひそめた。
「後、それ何?」
 へ、と雲雀を見上げる幼児をねめつけ、雲雀はぼそりと、悪趣味、とだけ呟いた。 綱吉は一度瞬いた。
「……いや、ちょっと色々あって」
「まだ僕に隠し事があるのかい?」
 さっと視線をそらした綱吉を雲雀は睨み付けた。視線は外さない。
 だらだらと汗を流す綱吉の姿は確かに、雲雀も見た事のあるものだ。初めて会った時も彼は骸達とそうして共にいた。幼い子供ながらに、その内に自分とは比べものにならない強靱さを秘めているのに気付いた雲雀が、難癖をつけて綱吉を襲ったのだ。まあ、それだけではないのも確かだが。
 襲われた彼は、呆けて、それから。
「いつまでその格好でいるのさ。若作りしたいならあのままでも充分だよ。どうせ童顔なんだから」
「どうせってどういう意味だ!」
「そのまんまの意味だけど」
 顔をしかめる綱吉に雲雀は言い募る。
「南国植物は何も言わなかったの?」
「……むしろ大歓迎みたいで」
「わお! あの変態咬み殺して来るよ!」
「ちょっと待ってぇ!」
 嬉々としてトンファーを取り出した雲雀にすがりつく。かと思えば、彼は綱吉を引っ張り、こけそうになった幼児を腕の中に抱き込んだ。
 子供特有の体型。わたわたと短い手足を振り回すまん丸としたそれを抱き締めながら雲雀は鼻を鳴らした。第一印象のおかげで、どうもこの姿は落ち着かない。
「またかい?」
 低く問えば、大人しくなる。
 それを良いことに、雲雀は腕の力を強めた。
「ボンゴレとキャバッローネ……血族同士の溝は大きいけどね、僕は君を助けたいとは思ってる」
「別に隠してるつもりは無い。ただ、キャバッローネの迷惑になるんじゃないかって」
 そう綱吉が言えば、雲雀は目を丸くした。
 やけに静かな周囲に、気まずさを感じた綱吉が彼を見上げれば、何だ、そんなこと、とテノールが含み笑いで呟いた。
「……俺は真剣に悩んでんのに」
 膨れっ面を指でつつきながら、彼は笑った。
「迷惑にはならない。僕はへなちょこに大人しく従うつもりは無いからね。だから彼には何も話さない。秘密なら守るよ。もちろん、君の血族にも迷惑がかからないようにしてあげる」
 ただし、と少しだけ困った顔をする。
「それだけ、大々的な支援は出来なくなるけどね」
 柔らかい子供の髪を触りながら、雲雀は目を細めた。
 久々の邂逅は穏やかなものだ。
 この屋敷が天敵のものだというのが癪だけれど、ずっと会いたかったこれに会う事が出来た。
 薄く笑う。
 今回は、部外者になんてなってやらない。
 そんな雲雀の意志を感じたのか、子供がぶるりと一度震えた。
「……いいよね、綱吉」
 問いかけではなく確認。
 炎帝の血族の中でも一番の純血である彼なら雲雀の心中など言葉に出さずとも理解しているだろう。だから多くは語らない。血という価値と重みを知ってこそ、雲雀は語らない。対して六道骸はと言うと、彼は知ってこそ全てを語った。
 その辺りも気に入らない理由かもしれないなと思いつつ、思考が外れているのに気付き、雲雀は意識を綱吉に戻した。
 はあ、と大きなため息を一つつき、綱吉は雲雀を睨み付け、それから彼から一歩離れた。
「だから雲雀さんとは会いたくなかったんだよ」
 言うや否や、辺りを黒い霧が覆い隠す。満足げな雲雀の前に、綱吉は霧に覆われてしまった。
「僕は会いたかったけど」
 部屋中を埋め尽くす霧。寒気さえ覚えるそれは、どよめきざわめく。光すら遮断してしまい、部屋を夜に染め上げてしまった。
 かと思えば、急激にそれは晴れてゆく。音もなく、現れたときと同じように滑らかに消えてゆく霧を雲雀は手で払った。

「これでいいんだろ?」

 青年の声がして、雲雀はじっと霧を見つめる。
 一際深く暗いそこから、人影が姿を現した。
 子供、ではない。
 雲雀よりは低い背の、青年の姿だ。
 しかしその瞳と髪色は綱吉と全く同じで、そして面影は子供のそれを残している。 雲雀は、笑った。

「それでいいんだよ、綱吉」

 青年は、眉尻を下げ、困ったように笑んだ。





 携帯の字数が足りない。
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