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燃焼

   

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嘆きの暁と叫びの海を越えて④

 嘆きの暁と~の第四話。もう少しで最終回だー。
 精神的に気持ち悪いと捉えるか純愛と捉えるかは人次第かな。ちなみにリオは気持ち悪い派です。
 そんな訳で、では注意事項にいってみましょう!

・オリキャラがいます
・オリキャラと綱吉が結婚しています
・ムックは死亡
・オリキャラは綱吉との子供を妊娠
・でも綱吉総受け

 大丈夫な方はどうぞ!!













 泣いても、いいですよ。
 どうせ見てるのは僕だけなんですから。
 そんな強情にならなくてもいいじゃあありませんか。
 君は頑張り過ぎますから。
 いいんですよ、たまには泣いたって。

 だから、ないてください。




 ただ。

 君にはこの声が届かないのが、
 僕にはとても、苦しいのです。





嘆きのと叫びのを越えて





 飛び込むようにして乗った黒塗りの車は、綱吉が扉を閉めて背もたれに背を付けた瞬間に素早く走り出した。
 いつになく真剣な表情の元プロレーサーの運転手を見て、綱吉は己の家庭教師の手回しの早さに苦笑いした。自分がレストランにいる間に既に行き先を連絡してくれていたらしい。安全運転ながらも、飛び去る窓の景色はいつもより倍近く速い。とんでもないスピードでかっ飛ぶ車は、やがてマリアの入院する病院へ、普段より各段に早く到着した。
 焦った顔で待ち受けていたのは、右腕の獄寺とその部下数名で、獄寺はロビーでせかせかと歩き回っている。
「隼人!」
 呼び掛ければ、はっとした表情で彼はこちらに駆け寄ってきた。
「マリアは」
「こちらです」
 部下達に、この場を見張るよう指示してから、獄寺は駆け足で綱吉を先導する。
 夜の病院は最低限の明かりしかない。
 足元の不安な薄暗い廊下を静かに走りぬける。一階にある産室は後もう少しだ。
 やがて見えてきたのは、雨と晴の守護者達が守るように立つ扉だった。その前の廊下に備え付けられたベンチには、雲が足を組んで座り、その隣にもう一人の空が偉そうに座っていた。ザンザスがこちらを見て鼻を鳴らす。
「来やがったか」
「よっす、ツナ。中に坊主がいるからさ」
「わかった」
 リボーンまで来ているらしい。
 ボンゴレの次代となる可能性の大きな十代目の長子だ。とち狂ったどこかのファミリーに襲われるかもしれない。つい最近にも別のファミリーと争ったばかりなのだから、警備を厳重にし過ぎるという事は無かった。
 産室の扉の前に立つ。
 獄寺が慌ただしく通った看護婦を捕まえ、綱吉が産室に入れるように手配した。
 どくどくどく、と早いテンポで鼓動を刻む。不安と期待が入り混じり、とにかく焦っていた。
 マリアは無事だろうか。マリアは生きているだろうか。体の弱い彼女だ、お産には耐えられるだろうか。子は、無事か。
 扉が開かれ、急いて足を産室に踏み入れる。中からは泣き声のような悲鳴と、医師や看護婦の励ますような声。視界に入ったのは、出産の風景そのままで、そして部屋の隅で所在なさげにじっとその様子を見守るリボーンがいた。
 痛みに悲鳴を上げる妻に駆け寄り、綱吉はその手を握り締めた。
 そして、





 いらいらとした様子で、貧乏揺すりをしたり指でリズムを刻んだり煙草を開けては閉めたりする、三人に山本はため息をついた。
「貧乏揺すりしてたら貧乏になるんだぜ、ザンザス。雲雀もちょっと落ち着けよな。後、獄寺、ここは禁煙だからな」
 苦笑混じりに言えば、一斉に殺気の籠もった眼光が飛んでくる。こえぇ、とふざけながら両手を上げれば、隣に立つ笹川がうむ、と頷いた。
「いらつくのは分かるが、それは沢田の仕事だ! 俺達は極限守るべきだぞ、余裕を持たんか!」
「その通りなのな」
「うるせぇ、肩甲骨! 分かってんだよ、んな事は!」
 獄寺が噛みつく横で、
「ほんと、男って役に立たないよね。僕もう気絶しそうなんだけど」
「気が合いそうじゃねぇか」
 青ざめながら、二人して肩を落としている。
 二回目のため息を山本がついた。
 これでマフィアなのだ。それも重鎮。まあ、いざという時に使いものにならないような事態は無いだろう、多分。
 扉の向こうの綱吉もきっと、昔のように慌てながら妻を励ましているに違いない。
「無事に生まれるといいなあ」
「極限その通りだ」
「十一代目はどちらに似られるんだ?」
「さあね、沢田に似てたらつい咬み殺しちゃうかもしれない」
「奴は十一代目にする気は無いと言ってやがったぞ」
「ははっ。坊主が許す訳ないだろー!」
「沢田も結局、ボンゴレの十代目になってるしね」
「選ぶのは生まれてくる沢田の子だろう! 俺はどちらでも構わんがな!」
「なる気が無いなら俺がもらうか」
「テメー! まだ狙ってやがったのか!」
「この調子で、結局十一代目にさせられそうだね」
「そういや、名前はもう決まったのか?」
 山本の問いに獄寺が答える。
「初めはマリアさんが新之助になさりたいと仰っていたんだが、十代目が反対なさってな」
「それってあれ? 吉宗の幼名だよね?」
「俺は春日部の幼稚園児しか思い浮かばねーや」
「……シンノスケは日本じゃあ使わねぇのか?」
「いや使うが、綱吉の息子が新之助では極限そぐわんという事だろう」
「それで、色々と意見を取り入れた結果、吉宗になされた」
「やっぱり将軍シリーズなんだ、そこは」
「十代目にケチ付けんのか雲雀ぃ!」
「落ち着けって、ごっきゅん」
「…………………………ああ、うん」
「え」
「「「「………」」」」
「……す、すべっちまった?」
「……君、ほんとにムードメーカーだったの……?」
 廊下に、げんなりとした雰囲気が流れたその時だった、


 よく知った男の、悲痛混じりの叫び声が聞こえたのは。


 即座に全員が己の得物に手をかけるが、しかしすぐに彼らはそれから手を離した。
 敵襲などではないのだ。
 違う。敵襲ではない。
 その場にいた全員が、瞬時に理解して、そして、否定しようとした。
 だが、事実は決して変わらない。





 ――お願いね。


 一言、震える唇で呟かれた言葉を最期に、彼女の体から力が消えた。


 懸命に蘇生を試みる医師達の横で、綱吉は呆然としてそれを見ていた。
 何故だか思考だけは冷静に周囲の状況を観察していて、医師らの表情が恐怖に強張っている所だとか、幼いヒットマンが死んでしまった彼女に釘付けな所だとか、彼女の汗ばんだ白い肌だとか、目についたものを片っ端から脳内で処理していく。
 綱吉は冷静だった。
 焦っても慌てても仕方がないのだと分かっていた。それこそ、解りすぎるほどに。

 彼女は、死んだ。

 腹に子を宿したまま、その弱い体は重い出産に耐え切れなかったのだ。医師達を責めるつもりも無い。他にどうしようもなかった。
 直感と理性が感情を凌駕してしまい、泣き叫ぶ事が出来ない。
 それに、綱吉には泣けない理由があった。

「終わっていない」

 ぽつりと呟いたボンゴレ十代目をその場にいた全員が振り向いた。
 彼の熱にうかされたような視線はぞっとするような冷ややかさを伴って、妻の膨らんだ腹に注がれていた。
「まだ、いる」
 一瞬の逡巡の後、理解したものが叫ぶ。
「子供だけでも助けるんだ!」
 一拍遅れて、慌ただしく室内が動き始める。
 綱吉はきびすを返した。その後をリボーンが追いかける。
 足早に産室を出て行く綱吉の隣に並んだリボーンは、何かを言いかけ、そして何も言えずに唇を噛んだ。
 綱吉の表情は固い。
 今、一番苦しんでいるだろう彼にかける慰めなど、リボーンには全く考えつかなかった。ただ、隣に並ぶ事しか出来ない。
 見上げた男は、凍り付かせた表情を崩さず、じっと前だけを睨んで進む。
 せめて、子供だけでも助かればいいと思った。それが、これからの綱吉にとって必要な事だろう。妻を亡くしてその上、子まで亡くすだなんて、彼にはきっと――いや、彼なら耐えるのかもしれない。
 けれどそんな嘘は決して長くは続かない。
 リボーンは、初めて神の実在を望んだ。そしてその加護が得られるよう、祈った。
 可愛い教え子の為にも、その子供が健やかに産まれるよう。
「俺は、」
 不意に響いたのは様々な感情を押し殺した震える言葉だった。
 綱吉は視線を前に向けて告げる。
「今ほど、自分の血が憎らしい事は無いよ」
 綱吉は足を止めた。
 応える言葉を持たないリボーンは、じっと綱吉を見上げる。
 彼は、どうしてだか、恐れているように見えた。理由はわからない。ただひっそりと、何かに。
「リボーン」
 そっと向けられた視線は、歓喜と悲痛と恐怖に彩られていた。
「何なんだろう、俺、怖いんだ。だけど、でも嬉しいんだよ」
「……どういう意味だ」
 彼は自身の血に引っかかりを感じたらしい。
「わからないんだ」
 だけど、と綱吉は告げる。


 俺は俺の子を、殺したいけど抱きしめたいんだ。


 同時に、赤子の泣き声が上がった。





 君の元へ向かおう。


 どんなに遠く離れていても、君の傍へ行こう。
 笑いながら泣く君の、悲しいぐらいに馬鹿げた虚勢を笑い飛ばして、そして君に心安らげる時をあげよう。

 君の隣に行こう。


 君の


 隣へ







「また、会いましょう」













 総毛立った背に冷や汗が流れ落ちると同時に、歓喜のあまりに涙が零れ落ちた。体の奥の奥の奥の奥底から沸き上がる原始的なこの感情に身を任せたかった。叫びたい。泣きたい。笑いたい。
 けれど生命を泣き叫ぶ声を聞きながら、綱吉は小さく笑った。
 氾流を小さな体に押し留めて、彼は震えながら小さく笑った。





 ああ


 かえってきました




 きみの

 もとへ






 踵を返して綱吉は足早に産室へと戻って行く。
 呼び止める子供の声も聞こえなかった。
 ただ駆けた。
 そして駆けながらずっと考えていた。


 俺は、殺すのか生かすのか。



 ずっとずっとずっと、考えていた。






 泣く君を置いていける訳が無かった。
 いや、君が他の何かに奪われるのが赦せなかった。
 君は余す所無く僕のものであってしかるべきだと思った。君がそれを許さなくても、ならば僕が君のものになりたいと思う程に君は、僕のものであってほしかった。
 最期に泣いた君を置いていける訳が無かった。
 一人闇夜に取り残された子供のような顔をした君を、残していく気にはなれなかった。
 何故だか、彼には笑っていてほしかった。


 優しくて冷酷なゴッドファーザー。
 しかし彼はただの人間だったという事実を知れば、僕は、彼を守りたいと思ったのだ。



 ああ、だから、僕は。






「また、あえましたね」









後書き

 シリアスをぶっ壊しますが、ただのストーカーですやん。
 多分次でこの話は最後。後は番外編でちょびっと続けたいかな。もしかしたらこれが番外編になるかもしれないけど。
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