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陰謀に陰謀に陰謀にしかも更にその裏の裏の裏。
……頭を使い過ぎて正直陰謀がどうでもよくなるような、そんな話が読みたい(陰謀の意味はあるのか、いや、無い)
主人公が最後に生き残る映画は嫌いです。
這いつくばる勝者でもいいと思います。
立ち尽くす勝者でもいいんじゃなかろうかと。
まあつまりが、そんな小説はリオには書けないという意味です(どんなオチだ)
オリジナル、無駄に長い、どうでもいい、厨臭い、にゃー、な小説です。
だから、と男は首を振った。
「意味がわかんねぇんだよ!」
少年はわらって、答える。
「そりゃそうだろうさ」
「だってお前は、何も知らないんだから」
なきうた
ありがとう、お兄さん。
その子供は言った。
洋風の煉瓦が敷き詰められた石畳。この通りに木造建築物など一切無い。鉄筋コンクリートの化け物どもが天に向かってそそり立つ。わずかの隙間も無く、ひしめきあうようにしてビルが密集するこの通りの路傍で、その子供に出会ったのだった。
その女の子は、まだ4、5歳くらいの背丈で、邪気の欠片も無くふらふらと道を歩いていた。不安そうに周囲を見回すでもなく、スーツだらけの中にぽつんと浮いた白いブラウスにベージュのスカートは、波に呑まれたり這い出たりしながらぼうと歩いていた。声をかけてみようかと思ったのは、そんな子供を数分、つけてみてからだった。ストーカーと言うなかれ、心配しただけだ。悪いのに捕まるのではないかと。
どこへ行くのかと問えば、別段行くあても無く、ただ散歩していただけだと判明した。親は仕事に行っているらしい。本来ならば保育園に預けられている身分であったが、彼女自身の言によれば、『ちちくさい』子供とままごとをするのが耐えられなかったので、こっそりとしかし大胆に、その保育園を抜け出して来たらしい。
「おじさんは、何でスーツも着ずにふらふらしてるの? むしょく?」
近くの公園にまで移動して、平日の空いた公園のベンチに二人して座っていると、彼女はいきなりそんな事を言った。
「おじさんじゃなくてお兄さんだよー。まだ僕は二十代だからねー?」
そりゃ一桁からしてみれば二桁の年齢はかなりの年上なのかもしれないが、それでもまだぴちぴち……は死語だったか、しかし若人に向かっておじさんは無いだろうおじさんは。
憤慨していると彼女は、ふふ、と笑った。
「そうやって怒る人は『よゆうのないひと』だって、お父さんが言ってたよ」
失礼な父親だ。
「だからお母さんはそうなんだって」
「……君もきっと、僕ぐらいの年になれば、今自分が言っている事がいかに馬鹿馬鹿しいか分かるようになるさ」
「そう?」
最近の子供はませている。
足を組んで、大きく息をついた。
天を仰ぐようにして、ベンチにもたれかかる。
不意に、子供が息を呑んだ気配がした。何事かと振り向こうと思えば、そのまま、と叫ばれる。
一体何なのだ。
「髪の毛、きれいだね」
「……そりゃどうも」
「染めてるの?」
「染めてる」
「傷まないの?」
「傷んでるだろ」
「ああ、ほんとだ。でも太陽に光るときれいな銀色に見える」
そしてまた、あ、と叫ぶ。次に青空だけだった視界に子供の小さな顔が突き出てきた。
「カラコンしてるの? 本物? 外人?」
「これは自前だ。灰色だろ? ここの生まれじゃない。後余計な対立を生みたくなければ、外国人と言っておけ。僕は気にしないが」
「どういう意味?」
「国籍はここ、帝国だし、生まれたのも帝国だ」
「こくせき?」
説明が面倒で、大きくなればわかる、とだけ答える。口を膨らませる子供は、無遠慮に小さな手を頬へ伸ばしてそのまま両脇に引っ張る。
「……」
「おじちゃん」
「ほひーはん」
「お兄さん、なんぱしてきた割には、あたしの扱いがぞんざい」
ばちん、と手を離して、口をとがらせる。なんぱ? いつどこで誰がしたのだ。
「保護しただけだぞ」
「知ってる」
「……なかなかに、手ごわいな。お前は」
溜息をついて言えば、彼女は満足そうに微笑んだ。
子供のくせに、大人を手玉にとるんじゃない。まったく。
彼女はおとなしく隣に座り直した。
「お兄さんはどうして帝国に来たの?」
「今時そんな質問をするのか。お前の周りには外国人で溢れ返ってるだろう?」
「うん。いっぱいいるよ。皆、帝国に住んでる」
男は子供をちらりと見た。
彼女らの世代は、周りを見ればほぼ黄色人種のみという事が無かったはずだ。実際、こうも開放的になってきたのはここ三十年の話で、それが受け入れられるようになったのは極々最近だ。それまで外国人の受け入れに対してあまり寛容ではなかったこの国の政府も国民も、ここ数年でかなり改善されたと言っていいだろう。
いや、改善されたのか。
悪化した、という声もあがっている。
「なあ、お前は今まで変わったこの国しか見ていない。僕は昔を知っている。知っているからこそ、分からなくなるんだ」
「何が?」
「本当に、これで良かったのか、だ」
子供は本当に分からない顔をしていた。それもそうだろう。ただの独り言だ。ここ数年、ずっと心の内に溜め込んできた独り言なのだから。
これでよかったのか。これで全てが上手くいっているのか。
「もうすぐ学校で習うだろうが、少し前まで結構危ない国だったんだぞ、ここは」
「お母さんに聞いたことあるよ」
頷いた子供は、綺麗な黒い瞳をしている。
幼い、まだ何の穢れも知らない子供。
この純粋な瞳を、全ての人々がもてるなら良かったのに。
「だから、僕らは変えたかった。腐った性根の奴らを一掃し、伏魔殿から少しでも魔を排そうとした。一年間で三人もの首相が交代するだなんて信じられるか? どいつもこいつも裏のある奴らばかりだ。崇高かつ汚れ無き者となれ、とまでとは言わんがあの現状にはさすがに涙が出たぞ」
じっと、子供は聞いている。
理解出来てはいないだろう。だって所詮子供だ。
「二年間、政府がその機能を充分に発揮できなかった頃があったが、あの時の惨状は今はもう見る影もない。それはそれでいいんだろうさ。嫌な記憶は忘れられるものなら忘れてしまえばいい。過去の愚例としてあげるのは構わんが、別にあれを繰り返す必要は無いんだ」
「……お父さんは、国軍の偉い人なの」
「そうか」
「聞いたことがあるよ。『ひどかった』って」
男はにやりと笑った。
惨状について、ではない。的確過ぎるそのくだんの父親との言葉に笑ってしまった。
ああ、確かに、ひどかった。
「あたしは、しあわせなんだって」
子供の言葉に、子供を見下ろした。
風に揺れたポニーテールは、ふんわりと彼女の背中を撫でた。
そうか、とだけ男は呟いて、それから彼女の頭を撫でた。
「そうなのか?」
「……何が?」
「いや、何でもないよ」
ふふ、と男は笑った。
それから彼は立ち上がる。
空をその目をすがめて見上げた。
太陽がまぶしい。青い空には雲が浮いて、それから太陽がいて、スモッグが空を覆い尽くしても、その向こうにはそれらがあるのだと自分達は知っているのだ。
知っているから、僕達は生きている。
だって、君が言ったんじゃないか。
だって、君が言ったんじゃないか。
だって、だって、だって、だって。
君が言ったんじゃないか。
幸せに、なりたい、って。
だから、だからだからだからだからだから僕は。
「なあ、マコト。マコトもアオイも僕は大好きだよ。サナイもタカもハルコもホワンもみんな、みんな大好きだよ。生きていて欲しいよ」
「嘘だ」
「嘘じゃない。本当に、僕は……」
締め付けられる首のせいで、もう声が出なかった。
馬乗りに自分にまたがる男は、目を見開いてこちらを刺すような視線で睨みつけていた。睨んでいた、というよりは彼は、むしろ凝視していたと言ったほうがいいのかもしれなかった。憎悪のせいで醜悪に歪んだ彼の端整な顔をぼうと眺めながら、僕は笑った。
これで、いいのかもしれない。
「 る み 、 た だ い ま 」
「お兄さんは、何でこの国に来たの?」
子供は、男の方へと駆けてそして彼の足にまとわりついた。
柔らかく笑んで、男は膝を下り、子供の視線に合わせる。
「時が過ぎたから。もう充分だからだよ。僕はね、この国に本当はいてはいけないんだ。だけど、帰らなくちゃならない用事が出来たんだよ。だから、僕は、ここにいる」
「意味わかんない。何それ、かっこいいこと言ってるつもり?」
「手厳しい。……そうだな、僕は単なるかっこつけだよ」
要は、テメーのけつはテメーで拭けってことなんだけど、と心の中で男は呟いた。しかし幼いレディの前でそれを口に出すような愚行は彼はとらなかった。可愛い子に下品な言葉を知ってもらう訳にはいかない。綺麗な顔な人からぽんぽんと出て来る罵詈雑言はなかなかにきついものだ。実感しているだけに男は内心で溜息をついた。
目の前の子供は、きっとこれから色々なことを知って、そして色々なことを知らされないまま、それから生きて、それから死んでゆくのだろう。
絶望するときもあるかもしれない。足がすくんで前に進めないこともあるかもしれない。ただその場に留まったまま呆然と流れのまま、流されてゆくのかもしれない。
全てが喜びと悦びと慶びに満ち溢れたままの人生なんてありえない。だってその人は何もしていないのと同義なのだからだ。
「だから君は、前に進まなくちゃならないよ。だけど、ごめん。本当にごめんね」
「お兄さん?」
「君達に僕らの後始末をさせてしまう。君達が背負うはずの無い痛苦を負わせてしまった。出来る限りのことはするよ。だけど、それでも取りこぼしてしまうことは必ずある。それが君達の障害となってしまうだろう。謝っても許されないのはわかってる。だけど、ごめん。僕は、僕らは、万能じゃないんだ」
膝を地に着け、男は子供を抱き締めた。
「 お か え り な さ い 、 か け る 」
彼女は少年を抱き締めた。涙に濡れた彼の頬をちろりと赤い舌で舐める。
母性のような抱擁でも友情のような抱擁でも恋愛のような抱擁でもなかった。
彼女は少年を貪るように抱き締めた。
少年は泣きながら笑った。
「愛してるよ」
「嘘」
「本当だ」
「同情ならいりません」
「本当だって」
「同情なら」
「同情なんて、出来るはずがない!」
少年は、女を突き飛ばした。
「出来るはずがないだろう! 同情などしてやるものか! 絶対に、絶対にだ!」
「信じません。あなたは優しい人だから」
「お前はいつだって、疑ってばかりだ! 泣けばいいだろう、わめけばいいだろう! 死にたくないならそうと言え、僕が必ずお前を生かしてやる!」
女は諦めたように笑った。
「ええ、私はあなたを愛していますよ」
「っ、それこそ同情か!?」
「いいえ、本当です」
「嘘だ、嘘だ! お前は何で本当のことを言わない!?」
「いいえ、いいえ……」
女は、諦めたように、笑った。
それから両のてのひらに顔をうずめて、彼女はいう。
だって、私には、過ぎる幸せなんです。
「お兄さん」
「ん?」
「暇つぶしにはなったよ。一人でどうしようかと思っていたから」
でも、ソフトクリームぐらいおごってほしかったな。
子供は悪戯げに微笑んだ。無邪気な笑みにこちらの心も何故だか和む。
男はああ、と呟いて立ち上がった。
「送るよ。保育園まででいいか?」
「うん、お願いします」
ちゃんと礼を言える子供ならしっかりとした大人になるだろうな、だなんて考えながら彼は子供と連れ立って平日の公園から抜け出した。
子供に案内されながらも保育園に向かって足を進める。
そう言えば、彼女の父親は国軍に属しているとか言っていたか。ぼんやりと考えながら、彼は一言も発しない子供の手を繋ぎながらゆっくりと歩く。急ぐ必要は無いだろう。まあ、向こうの保育園側にしてみれば子供がいなくなってしまったとかで大騒ぎになっているだろうが。申し訳無いがゆっくりと歩かせてもらおう。
すれ違う人々。黒い髪、金髪、黒い肌、黄色い肌、青い目、茶色い目、黒い目、がっちりとした人、背の低い人、様々な人種とすれ違いながら、男は表情を消した。
今が正しいのかどうかなんて考えている暇は無かった。出来ることをしなければならない。
ふと、視界に入ったのは路肩でアイスを売る車だった。
足を止める。
不思議そうにこちらを見て来た子供に、それを指して見せれば、ぱあっとその顔が輝いた。
罵られたことは何回もあった。
「最低……!」
だけど、いつだって冗談混じりだったのに、今回だけは、彼女は真剣な表情で、目に涙を貯めてそう言った。
こちらに向けた視線は微塵も揺るがない。逆にそれが彼女の真意を示していた。
「最低よ、あなたは!」
白衣が煙にまかれる。
燃える部屋の中で、彼女は立っている。
「覚えていなさい、私はあなたをずっと憎みます。生涯、許しません。憎んでいます。殺したいけれど、私にはその力が無い。その代わり、」
忘れない
彼女は、言い放った。
震えていた声音も、今だけは色の無い透明なガラス柱のようにしっかりとしていた。
「連れて行け。幽閉しろ。決して殺すなよ」
「はい」
部下に言い捨て、踵を返した。
けれど、知っていた。
彼女はずっと、こちらを見つめていた。
「おいしいねぇ」
並んで歩く。
「零すなよ」
「はーい」
茶色と白の交互に混ざったミックスソフトをなめる子供の頬は既に汚れていた。嘆息して、すぐ傍でティッシュを配っていた美人から一つティッシュをもらう。後で拭いてやらねばならないだろう。もう少し綺麗に食べられないのだろうか。
自身のソフトを口に運びながら、男は心の中でぼやいた。
それにしても一体僕は何をしているのだろう。
今更ながらにわいた疑問に嫌気がさした。気まぐれを起こしたのが悪かったか。すべきことを後回しにしたつもりは無いが、結果、無駄に時間を潰した気がする。時間もそれほど無いというのに、ゆっくりしすぎなのかもしれないな。
けれど、いつもより楽しかった。少なくとも、この一年よりは、格段に今日の方が楽しかったと断言出来る。
「連邦国に行ってたんだ。一昨日までね」
「いいなあ、あたしも行きたい! ほら、綺麗な滝があるんでしょ」
「ああ、見て来たぞ、ってお前、ちょっと止まれ。顔拭いてやるから」
食べ終わった子供の顔を見れば、ひどいことになっている。急いで残っていたソフトを食べると、男は自由になった両手で子供の顔を拭き始めた。ひどいことになっている。
「ま、観光客だらけでろくに見れはしなかったが」
「綺麗だった?」
「荘厳だった」
むっと子供は唇をとがらせた。
「どう違うの」
「よし、オッケーだ」
立ち上がって、歩みを再開させる。
「アゲハチョウは綺麗だな」
「うん」
「僕としては、荘厳は外国の宮殿とかそんなんだが」
「あ、分かった!」
「そうか」
「そーごん、そうごん、ね。覚えとこ」
にっこりと笑ってご機嫌で子供は男の手を引いた。
「もう少しなの」
泣かなくてもいいのに、と思った。
別に泣かなくてもいいじゃないか。
辛いのは分かるけれど、苦しいのも分かるけれど、だけど、君達はこうして幸せになれるじゃないか。
ああでも嬉しいなぁ。泣いてくれるぐらいに、僕の苦しみに君も苦しんでくれるんだなぁ。
「愛されてるねえ」
「うん、僕は愛されてるんだねえ」
老爺の言葉に、にこにこと少年は笑った。
その前で、男が叫ぶ。
「ふざけるな!」
「ふざけてないよ。真剣に、僕は嬉しいんだけど。ああほら、もう泣かない」
少年は男の隣にいた女に微笑みかける。彼女はひくりと喉を鳴らしてから、更にしゃくり声を大きくさせた。
「まったく、子供じゃないんだから」
「お前の方がよほど子供だ!」
「それからお前、わめくな」
「う、俺に対してきつくないか?」
男が目尻の涙をぬぐいながら問えば、少年は綺麗な笑顔できっぱりと切って捨てた。
「男の泣き顔なんて見ても面白くないだろ!?」
「あんたが隊長なんて信じられねーよ!」
「褒め言葉をどうもありがとう。ああ、泣かないでってば、サキ。君の泣き顔は確かに可愛いけれど、僕は君が笑ってるほうが好きだよ?」
「このフェミニスト!」
「お前は黙れ」
女の頭を撫でる。
彼女はくしゃりと顔をゆがめて、それから一つだけ頷いた。そして少年に抱きつく。
ぽんぽんと背をたたきながら少年はくつくつと笑った。
「ごめんね。何も知らさなくて」
女は頷いた。
「でもあなたにまた会えて、本当に嬉しいんです」
「僕も、嬉しいよ」
女は少年の肩に顔をうずめた。
囁くように、彼女は告げる。
「後で、ルミさんの部屋に行って下さい」
「……ああ、行くよ。必ず」
もう主のいない部屋へ。
「ここでいいわ」
もう目の前だしね、と子供は笑った。
会社の群れより少し離れた場所にある保育園は、あるビルの二階にあるようだった。
ちらりと周囲に視線を走らせ、男は鼻で笑う。
「警備体制がなっていないな。道理で子供にも逃げられるわけだ」
「あたしのこと馬鹿にしてるの」
「していない。立派だと言っているんだ」
子供は顔をしかめる。そうは聞こえないな、と彼女はすねたように言った。
機嫌をとるように、彼女の頭を撫でた。
ちらりと二階に視線をやれば、一人の保育士がこちらを見下ろして慌てたようにしている。そりゃあ、行方不明だった子供が帰ってこれば慌てるだろうなあ、だなんて人事みたいに内心呟いて、男は鼻を鳴らした。
もうここまででいいだろう。不審者が子供を連れまわしてただなんて通報されては敵わないし。
踵を返した。
「じゃあね。お元気で」
お兄さん、と子供は男を呼び止めた。
何事かと振り返れば、子供は満面の笑顔で言った。
「ありがとう、お兄さん」
子供が保育園の中に消えてからも、しばらく男はそこに立っていた。
「ありがとう、か」
言われたのは随分と久しぶりな気がする。それだけ自分の行いが悪かったのか、それともすさんでいたのか。分からないが、確かなことはここ一年は誰からも言われなかった言葉だということだ。
「いいこと、したのかなあ」
何をもってしてありがとうなのかは今一分からないが、しかし気分は良い。
男はくすりと笑って、それから足を踏み出した。
会いたかったんだ。
この数年というもの、会いたかったんだ。
ただ、一言、謝りたくて。
君の顔を見たくて、面と向かって謝りたくて。それから、それから笑いあえたらいいなと思ってるんだ。それが出来なくてもいい、一言だけ謝らせてほしいんだ。
君の心がそれで慰められるとは思っていないけれど、だけど君の心に僕が真実、君に幸せになってもらいたいということを、知っていてほしいんだ。
チャイムを、鳴らす。
返答は無い。
ああ、やっぱりダメだったのか。
気を落としかけた時、ステンレスの扉が開いた。
「新聞ならいらねー!」
歯ブラシをくわえた男が、泡を飛ばす。
それからその男は、大きく目を見開いた。
ぽろり、と歯ブラシが地面に落ちる。
この数年で、少し年をとっているように見える。
ぼんやりと考えながら、男は、言う。
「謝りに来たんだ」
返答は無かった。ただ呆然と彼はこちらを見るだけだ。
それもそうかもしれない。過去の亡霊がいきなり現れたのだ。脳内が処理落ちしても仕方の無いことなのだろう。
男は、腰を折った。
「ごめん。今まで本当に、ごめんなさい」
こんな事になるとは想像していなかった。
こんな真実があるだなんて、知らなかった。
目の前に佇む少女も同じなのだろう。彼女もじっとこちらを見つめて、そして呆然としていた。どうしようもないというように、目を見開いたまま動かない。
感動の再会にはならなかった。
なぜならどちらも、お互いが眼前にいることを信じたくなかったからだ。
だって信じてしまえばどうなる? 今までの自分はどうなってしまう?
あの子に向けた憎しみはどうなる? あの子を憎みつづけた、俺は一体何をしていた?
先に動いたのは、少女だった。
あ、と一言声を漏らして、そして崩れた。
地面に膝をついて、彼女は呆然と天を見上げた。
「嘘、嘘だった、ああ私は、何てことを、して」
それから彼女は泣いた。
大きな声をあげて、泣いていた。
気付いた時には視界がぼやけていたのは、自分もまた同じだった。
拳を握り締め、それから地面を一回、殴りつけた。
このどうしようもない焦燥は、正しくて。
そしてこの後悔は、生きる糧にするしかなくて。
毎日笑うのは、あの子のためだと知れば、あの子は一体どんな顔をするだろう。
戦禍の傷跡がもうすぐ癒えるだろう頃に、その少年はかえってきた。
泣きそうな顔で、その場に立つ子供は、年月を感じるほどに成長していた。
男は、顔を隠してしまったかつての友を見つめた。
答える言葉が見つからなかった。
しばらく二人は、無言のままに立ち尽くしていた。
後書き
まあお分かりの通り、書き殴りました。もう書き殴りまくりました。最後の方力尽きたの丸見え…。
というわけで、愚作でした。
何処に入るのかなあ……、多分、戦士達に~になるか。HPに移動させたら即刻リンク削除してやるっ。
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