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燃焼

   

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嘆きの暁と叫びの海を超えて②(6927)


 何かグロシーンに程遠い。も、もうすぐだ。次か、その次ぐらいで書けるはず……!
 遅筆で申し訳ありません。ついでに分かりやすいオチですみません。


 ちなみに、腐でない友達とカラオケに行って来ました。
 なのに、結局も○てけ!せ○ら○服を皆で歌っていました……。

 ……あれ?何かうちの学校、潜在的オタク率が高くない?






 冬のある一日。

 やけに霧の濃い日だった。

 ただの霧ではなく。


 全てを覆って、奪い去ってしまうような濃霧。






 嘆きのと叫びのを越えて





 昨日の翌日、つまり今日の晩に設定された話し合いの席の為に綱吉は今猛スピードで手を動かしていた。思わぬ会議が飛び込んでくれたおかげで、通常時のスケジュールが繰り上げになっているのだ。ただでさえきついスケジュールが、今日は更に悲鳴を上げていた。
 しかしだからと言って手抜きはできない。そんな事をしようとすれば、机の前にわざわざソファを持ってきて偉そうに座るお子様に殺される事間違い無しだ。今だって楽しそうに拳銃を弄くっている。一体誰がこんなふてぶてしいガキに育てたのか。
 ドンッ。
「全部聞こえてんぞ、ダメツナ」
「か、かすった……頭かすったよ、殺す気か!?」
「さっさと手ぇ動かせ。時間は待っちゃくれねーんだ」
「分かってるよ!」
 怒鳴り返して、また書類に意識を戻す。
 リボーンは帽子の上のレオンを撫でる。
 そう言えば。
 カレンダーで日付を確認した。二日後の出産日に赤ではなまるが付いている。しかしその前日、明日の日付には黒い丸がぶっきらぼうに付けられていた。
 明日、か。
 心当たりがあった。
「骸の命日だな」
 呟けば、綱吉の手が止まった。
「うん、明日」
「今年はどうする?」
「いつも通りさ。何もしない」
 そう言って、仕事を再開した綱吉をリボーンがじっと見やる
「別に墓参りぐらいなら、行ってもいいぞ?」
「予定詰まってんじゃん」
 手は止めず返した綱吉に、リボーンは言い募る。
「スケジュール調整もしてやる」
「無理でしょ。外せない予定ばっかだし」
「延期する」
「ようやくカルカッサと同盟結べそうな時にそれはちょっと」
「どうせ格下じゃねーか。パシリを脅せばどうにでもなる」
「お前スカルいじめんなよ。泣いてたぞ? あったかい紅茶あげて頭撫でたら泣きやんだけど」
「よし、ちょっとパシリを殺してくる」
「待て待て待て待て!! 俺の言った事聞いてた!? いじめんなっつったじゃん!!」
 額に青筋を浮かべて重装備で今にも飛び出しそうなリボーンを慌てて抑える。
 何がしたいんだこのかてきょーは!?
「てかさ、墓参りに行ってほしい訳?」
 幼い体を羽交い締めにしたまま聞いてみれば、ようやくリボーンは暴れるのをやめた。
 数秒間の沈黙。
「……行きたけりゃ行ってもいい」
「我慢してるんじゃないかって心配だった?」
「まあな。何だかんだでいつも行ってねぇだろ?」
「確かに」
 この六年、一度だって墓参りをした事が無い。いつも予定が詰まっているのだ。ドン・ボンゴレはとても忙しい。
 大人しくなったリボーンを離し、綱吉は机に戻る。
 息をついて、カレンダーを見た。
 その日付に円を付けたのは綱吉だ。
「……いいんだ」
 リボーンの黒い瞳を見据えて、綱吉は告げた。
「墓参りはしない」
 はっきりとしたその声に、リボーンは黙ってボルサリーノのつばを下げた。
 そして、綱吉のペンが紙上を滑る音を聞いてから、ソファに座り直した。

 今度は誰も何も言わなかった。
 ただ鬱蒼とした沈黙が、部屋の中に蠢くだけで。





 病室をノックすれば、滑らかな高い声がどうぞと答えた。
 警備をする黒服が開けた扉を抜けて、広い個室へ足を踏み込めば、奥のベッドで女性が手を振っているのが見えた。
「あなたが来るのは久し振りね」
 持ってきた見舞いの花を青いガラスの花瓶にいける。
「ドンが忙しくてな。代理だ」
 体を起こそうとするのをやんわりと押し留め、リボーンはパイプ椅子に腰掛けた。
 マリアは体が弱い。
「……どうだ?」
「どうという事も無いわ。ああでも、帝王切開は覚悟しておけと言われたの」
「そうか」
 リボーンは眉をしかめた。
 大体、こういう事は、山本なりランボなり、物腰柔らかな人間がやればいいんだ。二人ともポーカーなんざしやがって暇なのに、何で俺が。
 そうだ、と書類から顔を上げた時の、あの楽しそうな綱吉の表情! こういう場面が苦手な俺に、わざわざ見舞いに行け、だなんてボス命令を出しやがって。
 帰ったら一発殴ってやる。
 あくまでもポーカーフェイスで、リボーンは怒っていた。
「ねえ」
「あ?」
 不機嫌な声を出してから後悔する。驚いたようにこちらを見ているのは、繊細な妊婦なのだ。
「機嫌悪いの?」
「……いや」
「そう、ツナの言った通りね」
「は?」
 おかしそうにマリアは笑った。
「『リボーンは照れると不機嫌になる』って言ってたわ」
「情報をありがとう。俺は今からドンをしばきに行って来る」
「あまり無茶はしないでね」
「努力する」
 返答をして立ち上がる。
 つかつかと扉に近寄り、開け放とうとした時、背後から声がかかった。
「聞きたい事があるの」
 扉にかけた手を、外した。振り向けば、堅い表情のマリアがいる。
 彼女は、少し迷ってから口を開いた。
「霧の守護者は、どんな方だったの?」
 軽くリボーンは目を見開く。
 まさか彼女の口からその言葉を聞くとは思ってもいなかったのだ。
 なので数秒間、リボーンは不覚にも硬直してしまった。
「どうしてそんな話を?」
 聞き返せば、マリアは困ったように眉をひそめた。
「分からないわ。ただ、少し気になっただけ」
「……そうか」
 六道骸。
 彼は、一体どういった人間だっただろうか。
 姿形ならば鮮明に思い出せる。彼の言動も覚えている。けれど、本質を理解しているかと問われれば否と答えるしかなかった。あの男は、決して周囲に本心を見せはしなかった。だからこそ、霧の守護者としてふさわしいのかもしれないが。
「霧の話ならツナに聞け。あいつが一番霧に近かった」
 遠い遠い大空に、霧は憧れていた。
 マリアが小さく頷いたのを見てとり、リボーンは今度こそ外へと足を踏み出した。


 リボーンの背を見送ったマリアは、嘆息する。
 何故だろう。どうしても気になってしまう。
「……霧の、守護者、六道、骸……」
 呟いた唇は、血のように赤い。





 別に、スケジュールを変えようと思えば変えられるのだ。それをしないのは、ただ逃げているだけだ。
 コンピューターの画面を見ていた瞳を、瞼で隠し、綱吉はソファの背もたれにもたれかかる。疲れた目を押さえて、彼は息をついた。
 机の向こうに広がる部屋は、とても無機質だと思う。
 ここへ座してから既に七年が過ぎた。けれどいつになっても、この部屋を自室だと思う事は出来ない。整えられた書類と資料が並ぶ本棚も、上質な革張りのソファも、透明なガラスで出来たテーブルも、その上に乗った観葉植物も。
 どれだって、温かみを感じた事はない。
 せめて、と自室だけは自分の好きなようにさせてくれと家庭教師に食い下がって、寝室だけは自分好みの雑然とした風景になっている。
 まるで、十年前の生家のような。
「……」
 見回した視線が、カレンダーの上で留まった。
 明日。
 霧の守護者が、ドンを守った日。彼がボンゴレの英雄になった日。彼が、死んだ日。
 あの日まで、まさか骸が死ぬだなんて思っていなかった。むしろ人外で、あれは不死身だなんて思っていた節がある。赤い水を流して、死んで行くだなんて、考えもしなかった。
 俺を、置いて逝くだなんて、考えも、しなかった。
 綱吉は、ぼうと考えて、そしてもう一度パソコンの画面を覗き込んだ。
 いやいやいや、ちょっとしんみりしてたけど、明後日は出産だ。テンション上げて、今日の会談を成功させねばならない。
「よーし、頑張るか!」


 墓参りをしないのは、待っているからかもしれない。

 だって、あいつが言ったのだ。

 だから、俺は。








 結論から言えば、と骸は笑った。

「僕は、君が好きです」

 それに気の無い返事を返したのは、ちょっぴり照れくさかったからだ。まあ、骸はそれに気付いていたみたいだけど。
 穏やかな昼下がり。
 白い机に白い椅子。温室の中でのお茶会は、周りにある花を見ながらの楽しいものだ。束の間の安息であるそれを、綱吉はとても大事にしていた。
 敷かれた煉瓦に革靴をぶつけて、わざと音を出した。
 骸は、紅茶の入った陶器を口に運びながら、綱吉を見つめ続ける。
 視線がこそばくて、綱吉は顔を赤くしてうめいた。
「……な、何だよ」
「いえ、大した事では」
 だったら見るな、と言い返せば、骸はまた笑った。
「見ていたいんです」
「なっ」
「可愛いじゃないですか、見ていて、幸せになるんです」
 綱吉の顔が沸騰した。まん丸な瞳は見開かれて、綺麗な琥珀が陽に輝く。
「……あ、悪趣味っ」
 そうして、ごまかすようにプレートに乗ったクッキーへ伸ばされた手を、骸は、そっと掴んだ。びくり、と震えた手を握って、骸は綱吉をテーブル越しに引き寄せる。
 手、手首、腕、肩、首。
 上っていく骸の手は、最後に綱吉の頬に添えられた。
 椅子を引いて、立ち上がる。
 見上げる綱吉に近付いて、骸は微笑んだ。
 無言のままに、そっと唇を重ねる。




 穏やかな昼下がり。
 花咲き乱れる温室で。







 綱吉はうんざりしていた。
 夜のレストラン。貸し切りにされたそこにはたった三人しかいない。綱吉と雲雀、そして疑わしき同盟ファミリーのドンだ。
 会ってみて綱吉は確信を持った。
 この男は裏切り者だ。
 大体、嘘をついた所で、自分には意味が無いという事を分かってるんだろうか。超直感は内外に知れ渡るボンゴレの強みなはずなのだが。ああ、もしかすると信じていないのかもしれないな。オカルトチックな能力だ、呪いと置き換えてもいい。
 言い訳を連ねる男を見やり、そして綱吉はため息をついた。その綱吉の背後には、ひっそりと立つ雲雀がくつくつと小さく笑っている。男はびくりと肩を揺らした。
「ド、ドン」
「もう結構だ」
 引いた椅子から立ち上がり、男へ背を向ける。
「帰るよ」
「了解、ドン・ボンゴレ」
 すたすたと歩く綱吉を守るように、雲雀も歩き始めた。
 出口へと歩み去る綱吉を追い、前に回り込んだ男は、すがりついた。
 雲雀が構えようとした銃を、綱吉は目で制する。不満そうだが一応下ろされた銃を見て、男は叫んだ。
「ドンっ、どうかお許しを! これからはより一層の忠誠を誓いますから!」
 綱吉は情けなくすがる男を冷めた目で見下ろした。
 数秒の後に、綱吉は艶やかに微笑んだ。
 顔を明るくする男に、綱吉は右足を蹴り込む。
「がっ」
 腹に入った爪先に、男は咳き込む。
 微笑みをかき消した綱吉は、よりいっそう冷えた眼差しを男に投げかけた。
「……同盟ファミリーでありながらそれを裏切ったお前に、忠誠だなんて言葉が良く使えたもんだ」
 吐き捨てられた言葉に、男は震えた。
 極東の平和ボケしたジャッポネーゼだなんて誰が言ったのか。あまりにも似合わなさすぎる呼称だ。
「さようなら、ドン・ロッソ。もう二度と会う事は無いだろう」
 呆然とする男を残し、雲雀と綱吉はレストランを出る。


 そしてこの一夜の内に、ロッソファミリーは壊滅される。
 ずたずたにされたファミリーの幹部は、棺桶にも入れられず、冷たい海底で漂い続ける事になった。

 ロッソファミリーの優秀な表企業が、ある企業に買収されるのは、それから一週間の内である。






 とくり、とくり、と鼓動を刻む。

 赤い血が巡る体が、小さく揺れた。
 

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