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燃焼

   

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暁光は剣となりて⑩


 暁光は剣となりての十話目。方向性が未だに定まらない。まずくないか、これ。
 コロネロ? 誰、それ。
 コロツナ? 何、それ。
 こないだ日記の暁光~⑨をホームページに上げるとき、フォルダを間違って6927フォルダにしてしまいかけたのは内緒にしとく。










 いつだって闇の中にいた。
 訳の分からない世界。
 納得のゆかない世界。

 幸せな世界は俺にとって、とてつもなく近い所にあるが、触れてはならないきらきらとした何かだった。


 だから俺は黒が好きなのだ。
 この身が闇にあればこそ、俺は影でいられる。
 世界の影でいられるのだ。





暁光は剣となりて





 ざわり、ざわりと、鳥肌がたつ。
 冷たい風が背筋を素早く駆け上り、上った刹那に消えていった。
 一度、震えてから、コロネロは包丁を持った手を再度リズミカルに動かし始める。白い大根を切るのは意外と楽しい。味噌汁は、日本食の中でもなかなか気に入ったものだった。
 外見は古臭い日本家屋だが、中は案外先端技術が詰まっている。電気、水道、ガス、テレビも液晶の最新ものだった。どうやら新しい物好きらしい住人達は、それでもこだわりがあるのか、何故かしらコンロの横に、釜があったりする。
 不意に、首を傾げた。
 二度目の悪寒が彼を襲ったのだ。
 包丁をまな板の上に置き、袖まくりした腕をちらりと見れば、総毛立っている。
「何か、あったのか」
 こういう虫の知らせを馬鹿にしてはならないと、綱吉は常に言っていた。
 俺達は血で繋がっている。だから、
「血が、教えてくれる、か」
 もしそれが本当なら、今、何かがあって、綱吉はそれをコロネロに知らせたいと思っているのだろう。あれほどの古血ならば、その詳細まで血から読み取る事が出来るのかもしれないな。
 そこまで考えて、コロネロは苦笑う。
 考え過ぎか。まあ、ただの寒気である可能性の方が高い。
 コロネロは包丁に触れ、持った。
 そして、調理を再開する。
 綱吉は少し濃い味が好きだった。そして固めのご飯。
 ようやくの朝ご飯は、もう少しかかりそうだった。

 ちらりと、台所の中を眺めるのは、色違いの目を持つ男だ。
 寝間着である濃紺の浴衣を着たままの骸は、既に普段着に着替えたコロネロの背を見つめ続け、彼が違和感に戸惑うのもじっと見ていた。そして彼が料理を再開するのも。
 全てを見てから、そっと静かにその場を離れる。廊下へ出て、向かう先は仇敵と大切なものがいる部屋だ。
 先程の家中を駆け抜けた力の奔流を思い返して彼は呟いた。
「……あのままでも、充分可愛らしいのですがねぇ」
 奥の部屋へと向かう道すがら、廊下の隅に澱んだ黒い霧を見つける。ため息をついて、素足で蹴散らせば、それはすぐに消え去った。
 辿り着いた部屋の中からは、未だ、見えない霧が溢れ出ている。
 骸は、またため息をついた。





 「変わらないね」
「吸血鬼は年を取らないから」
 綱吉の答えに、ふん、と鼻を鳴らした雲雀は、立ち尽くす青年を胡座をかいたまま大仰に見上げた。
 茶色い髪は幼児であった頃と変わらず方々に跳ねていた。童顔、と言えば彼はいつも怒るのだが、幼い顔立ちは変わらない。服をどうしたのか、だなんて野暮な事は雲雀は聞かなかった。恐らく、幻術なり何なりと使っているのだろう、着ているのは大人物の黒い浴衣だ。
 どっこいしょ、とじじくさい掛け声で元いた座布団の上に座ると、彼はらんらんと光る琥珀色の瞳を雲雀に向けた。
「……ザンザスって、知ってる?」
 単刀直入だった。苦渋に歪む童顔を受けて、雲雀は一つ頷く。
「今のボンゴレの当主だろ。先代とは違って、過激派らしいじゃないか。吸血鬼の回帰を叫んでるって聞いたよ。いかにも君が嫌いなタイプだね」
「あいつ、ダムピールなんだよ」
 事も無げに言い放った綱吉に、雲雀は目をぱちくりとさせた。
 肘をついて、苦みばしった表情をする青年は、ダムピールなんだ、と繰り返した。
 一拍置いて驚愕がこみ上げる。
 腹の中がすうっと冷えていくのを感じながら、雲雀は、へえ、とだけかすれ声で返した。
 しばらくそのまま、二人は動かなかった。
 雲雀は、唇を噛む。
 人間とヴァンパイアが交わって出来た半分だけ血が黒い者達がダムピールだ。
 しかし、ボンゴレ当主がダムピールだなどという話、噂にも聞いた事が無い。しかしそれも当たり前の話かと納得する。
 『炎帝』ボンゴレの血族は古くから連なる偉大な血脈の一つだ。欧州系の中では歴史も規模も群を抜いており、影響力は巨大である。
 そんな高貴な血脈の頂点が、ダムピールでいいはずがない。どうしてザンザスが当主になれたのか理由は分からないが、その事実はボンゴレに明らかなる傷を付けるだろう。
 ならば、厳重に秘匿されるのは当前だ。
 雲雀が口を開いた。
 綱吉はそんな雲雀をじっと見つめる。
 とんでもない秘密だった。とてつもなく恐ろしい秘密。
 もし雲雀が知ったとボンゴレの誰かに知られたら、きっとその瞬間に雲雀より強大な古血がやって来て、彼を灰にしてしまうだろう。
 そんな傍迷惑な秘密を、綱吉は雲雀に告げたのだ。
 ボンゴレに属さず、キャバッローネに属する無関係の雲雀へ。
 雲雀が死ぬかもしれないと言うのに、彼はあっさりと雲雀に告げた。

 雲雀は、笑った。

「ふうん、いいね。それ」

 言った瞬間に時間が戻った。
「良いわけないだろ! 恭弥ってば、本当に戦闘狂だな」
「そうかい? そう言う君も、そんな事を僕に躊躇無く言うあたり、かなり酷い性格をしていると思うけど」
「あんたよりかはマシだよ」
 苦虫を噛み潰しだような顔をした青年は、食卓に上半身を投げ出した。
 何だか、疲れる。
 呑気に出されたお茶を飲む雲雀を見上げ、それから綱吉はため息をついた。
 がらり、と音を立てて引き戸が開かれた。
 現れたのは家主である骸だ。
「やめちゃったんですか、可愛かったのに」
 開口一番でそうのたまった骸へ雲雀から鋭すぎる視線が飛び、綱吉からは呆れを頂くが、言った本人は気にしてなどいない。
 悠々と部屋に入って綱吉の隣へ陣取った。
「目障りだから視界から消え失せなよ、変態パイナップル」
「ピーピー、鳴かないで頂けます? ああ、馬鹿鳥だから仕方ありませんかね」
「……何だって?」
「……さあ、何か?」
「喧嘩するなら外でやってね、二人とも」
 会えばすぐに空気を剣呑とさせる二人に、綱吉は迷惑そうに告げた。
 衝突して生じる被害は、まったくもって凶悪なのだ。目の前でそんな事をされれば、双方とも色んな意味で捻り潰したくなるのは間違いないだろう。付き合いの深い友を失いたくないので、ここは是非とも大人しくしてもらいたいものだ。
 そんな青年の苛立ちを感じたのか、二人は武器を納めて胡座をかく。
 それで、と雲雀は口を開いた。
「ダムピールなら、何な訳?」
「そんな簡単な事も分からないんですか、さすが鳥頭……」
「骸、潰すぞ」
 ぼそりと呟けば、途端に場は静まり返る。
「ダムピールだから、ヴァンパイアになりたいんだよ。だから俺の血を狙ってる」
 一瞬、雲雀は解せないという顔をしたが、すぐにげんなりと表情を呆れに変えた。
 なるほどね、と呟いたのは侮蔑のような納得のような、方向性の違った感情が混じった声を出した。
「君の血は、『炎帝』に近いからか」
 綱吉は頷く。
「末端のボンゴレの血脈だと、あいつは『薄い』って思ったみたいで、『炎帝』の子なら、あいつが思うだけの力を得る事が出来るんじゃないかって」
「そうなんですか?」
「……どうだろう。強くなるけど、でも、それだけだよ」
 骸が、鼻で笑った。
「綱吉君、強さだけじゃありませんよ。ザンザスは、『炎帝』の三世である地位も得られる。血を重んずる君達にとっては、由々しき問題じゃあありません?」
 嘲るように笑う骸に、雲雀がむっとした。
 綱吉は首を傾げる。
「年の方でまだまだ若造だって言われるだろうけど。『炎帝』はあんまり血を分けなかったから二世は数人だけだし、大体の人は死んじゃったし……生きてるやつは引きこもっちゃってるし、……実質的な当主っていう権力を持つなら、三世でも充分過ぎるのかな」
「その上、『炎帝』の直系が親になりますからね。直系の不興を被りたくなければ、他の者達はザンザスを大切にするでしょうね」
「ふうん、なかなかにあくどいね、そいつ。わくわくしてきたよ」
 そこで雲雀は綱吉を見やった。
 気怠げな青年。しかし先程の姿を思い返して、首を傾げる。
「で、逃げるために変身していたのかい?」
「そう、やつが知ってるのはこっちの姿だから、じゃあばれないようにしようと思って子供になってたんだけどさ。でも、まずっちゃって」
 てへ、と可愛らしく首を傾げれば、骸が赤い液体を噴き出した。どこからかはご想像にお任せする。
「『炎帝』の一番目としてはばれてないんだけど、アルコバレーノに血を分けたクソガキとして追いかけられてるんだ」
「アルコバレーノからも追われてますよね」
 復活の早い骸がにっこりと笑って付け足せば、雲雀は嫌そうな顔をした。
 綱吉が足を組み替え、前髪をかきあげる。
「いくら俺でも、ボンゴレとアルコバレーノ、両方を敵に回すのはつらいんだ」
「よく、そんなに敵を作ったもんだね」
 呆れたように言えば、次は綱吉が顔をしかめた。
 昔聞いた彼のモットーは、平穏無事な生活、だったような気がするが、自ら厄介事に首を突っ込む性格は変わっていないらしい。どんな馬鹿でも、反吸血鬼の代表であるアルコバレーノに手を出すという事が、どんな事か分からないはずがないだろうに。
 人間に喧嘩を売りたいのか。
「君を追う奴はもっと増えるよ」
「わかってる」
 雲雀は綱吉をじっと見据えた。
「人間だけじゃない。事を大きくしたくない吸血鬼だって君を追う。うちのへなちょこだって、どうするかは分からないよ?」
 情けないように見えて、意外に理知的な彼のことだ。きっと、いざという時は容赦なく雲雀ごと、綱吉を切り捨てるだろう。
 雲雀は、綱吉を見据えた。
 今度は雲雀が綱吉を試していた。
 血族間の垣根は高く、雲雀が綱吉を助けるのに覚悟がいったのと同様に、綱吉が助けを求めるにも覚悟がいるのだ。下手をすれば全てを敵に回しかねない。
 雲雀を犠牲にしてでも、彼は生きたいのだろうか。
 何回でも確認しなければならない。それだけ大切な事なのだから、念のために何回でも。
「……それでも、今をどうにかしたいんだ」
 綱吉がぽつりと呟いた。
 それを聞いて、雲雀は満足そうに笑う。
 雲雀の数倍生きてきた彼に対して、本来ならばこの態度は不敬にあたる。しかし彼はそれを許容してくれる。
 綱吉という吸血鬼は、怠惰でありながら、いつも今を生きている吸血鬼だった。最初の願いが生への渇望であったからかもしれないが、生に飽いた古血達と違って、決して飽く事は無く、成長を続けている。
 これだけ生きた古血で、彼みたいなのは少ない。
 成長を続けているという事は、いつだって未熟だ。
 未熟だからこそ、彼は生きているのだろう。
「喜んでお手伝いするよ」
 答えてやれば、綱吉はほっとしたように笑った。







後書き

 つ、綱コロ? コロ綱要素が見当たらないよ!?
 何だか道を間違えました。どうしようか。まあ、いいっちゃいいんだけど。いっそ総受けにした方がいいかもしれない。

 ようやく終わりが見えてきた。けど、多分まだまだかかると思う。
 二十話以内には納めたいんだけどなぁ。
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